データの収集法
(1)はじめに、線虫については、成長相が混合した線虫群、マウスについては組織や体液を材料としてタンパク質を抽出し、 トリプシンで消化、断片化しました。
(2)この消化物から糖鎖に対する親和性を利用した方法、 即ち固定化レクチンを用いたアフィニティークロマトグラフィーや親水性相互作用クロマトグラフィーによって、糖ペプチドサブセットを捕集しました。
(3)糖ペプチドのペプチド部分の同定を容易にするため、 エンリッチされた糖ペプチドにペプチド-N-グリカナーゼ(PNGase)を作用させ、糖鎖部分を切除しました。このとき溶媒として、 安定同位体・酸素-18(18O)標識の水を用いました。この酵素反応では、糖鎖切除に伴い、アスパラギン側鎖はアスパラギン酸へと変換され、 このとき溶媒の18Oが糖鎖付加部位へ取り込まれます。
(4)安定同位体修飾ペプチドをLC/MSショットガン法で分析し、多数のMS/MSスペクトルを取得しました。
(5)このスペクトル情報を元に、アミノ酸配列データベース(線虫はWormpep、マウスはNCBI Refseq)を検索し、 ペプチドのアミノ酸配列を同定しました。(3)の段階で安定同位体を用いた理由は、糖鎖の酵素的切除によって生じるAsnのAspへの変換を、 生体内外で自発的に進行する脱アミド化反応によって生じる変換と区別するためです。酵素反応による酸素18の取り込みは糖鎖修飾を強く示唆し、 修飾部位の同定精度が著しく改善されます。